「Azure サブスクリプション」移行の手順
1.はじめに
3大クラウドサービス1つである『Azure』おける既存サブスクリプションを、新規サブスクリプションに、利用しているサービスを移行する手順についてです。
これからご紹介する内容はAzureの『サブスクリプションへのサービス付け替え』作業になります。そのため、移行処理中における利用しているサービス、データのシステムダウン等の影響はありません。
2.事前準備
1.事前チェック
移行に伴って、『Azure Resource Manager(ARM)/V2 サービス』というサービスを利用している場合、移行作業の対象外です。仮に1つでもこのサービスを利用しているサブスクリプションがあった場合、データ移行の対象外となりますのでご注意ください。
また、マイクロソフトサイドで移行できるサービス(クラシックのみ)とできないサービスが存在します。以下はそのリストになります。
サービス名 | 移行の可否 | 注意事項 |
仮想マシン | ユーザー側で手動での移行可能 | 個別となればユーザー自身で移行する必要があります。 |
クラウドサービス | マイクロソフト側で自動移行可能 | |
Webアプリ | ユーザー側で手動での移行可能 | 利用データセンターによって移行の有無が変わってきます。また『サブスクリプション間におけるもの』や、『個別のWebサイト』の移行は不可能です。 |
メディアサービス | ユーザー側で手動での移行可能 | 利用データセンターによって移行の有無が変わってきます。 |
ストレージ | マイクロソフト側で自動移行可能 | 個別での『ストレージの移行』は対象外となります。 |
トラフィックマネージャー | マイクロソフト側で自動移行可能 | |
モバイルサービス | ユーザー側で手動での移行可能 | 利用データセンターによって移行の有無が変わってきます。 |
アクセスコントロール | マイクロソフト側で自動移行可能 | |
仮想ネットワーク | マイクロソフト側で自動移行可能 | |
予約済みのIPアドレス | マイクロソフト側で自動移行可能 | |
CDN | マイクロソフト側で自動移行可能 | 専用のポータルを使用している場合は、日数に余裕をもって事前にマイクロソフト側に連絡を入れる必要があります。 |
サービスバス | マイクロソフト側で自動移行可能 | |
Cache | 移行不可(一度削除して再作成する) | 移行不可につき、新規作成作業を行う必要があります。 |
SQLデータベース | ユーザー側で手動での移行可能 | SQLデータベースのエクスポート機能を使用している場合は移行不可であるため、再作成する必要があります。 |
HD Insight | 移行不可(一度削除して再作成する) | 移行不可につき、新規作成の必要があります。 |
Visual Studio Online | ユーザー側で手動での移行可能 | 『Visual Studio Online』と移行元となるサブスクリプションとのリンクを解除を行い、移行先にて新規リンクをユーザー手動で行う必要があります。 |
BizTalkサービス | 移行不可(一度削除して再作成する) | 移行不可につき、新規作成の必要があります。 |
Recovery Services | 移行不可(一度削除して再作成する) | 移行不可につき、新規作成の必要があります。 |
オートメーション | 移行不可(一度削除して再作成する) | 移行不可につき、新規作成の必要があります。 |
スケジューラー | 移行不可(一度削除して再作成する) | 移行不可につき、新規作成の必要があります。 |
API 管理 | 移行不可(一度削除して再作成する) | 移行不可につき、新規作成の必要があります。 |
管理サービス(アラート機能) | 移行不可(一度削除して再作成する) | 移行不可につき、新規作成の必要があります。 |
Active Directory- 多要素認証 | マイクロソフト側で自動移行可能 | あらかじめ、移行対象となるサブスクリプションを、同一の『Active Directory』に設定しておく作業を行う必要があります。 |
Active Directory- ディレクトリ | ユーザー側で手動での移行可能 | ディレクトリー機能は、サブスクリプションとは関連がないため、移行作業との関係はありません。既存と新規でアカウントが異なる場合は、新規アカウントをディレクトリに追加する必要があります。また、アカウント追加作業を行うことで、管理ポータルから確認することができます。 |
Import / Export | 移行不可(一度削除して再作成する) | 移行不可につき、新規作成の必要があります。 |
StorSimple | 移行不可(一度削除して再作成する) | 移行不可につき、新規作成の必要があります。 |
ExpressRoute | マイクロソフト側で自動移行可能 | |
マーケットプレース(旧Azure Store) | 移行不可(一度削除して再作成する) | 移行不可につき、新規作成の必要があります。 |
3.移行手順
1.移行先サブスクリプションの作成
移行作業を始めていくにあたり、まずは移行先となる新規サブスクリプションの購入・作成を行います。そのためにもMicrosoft IDの登録が前提となり、新たなメールアドレスを要します。以下は詳しい作成手順になります。
- 1.『アカウントセンター』に新規作成したMicrosoft IDでサインインをします。
- 2.サインインしたらデフォルト作成された『従量課金りサブスクリプション』があります。
- 3.画面左下端にある『+サブスクリプションの追加』を選択します。
- 4.[プラン選択]画面が開いたら[従量課金プラン]を選択します。
- 5.通貨設定を[日本円]にし、[有効化]にします。
- 6.事前に与信審査を受けていれば[請求書払い]が選択でき、住所等も登録済みであれば既に入力がされています。これら基本情報の入力と、受信者として請求書上の宛先担当者の入力が完了したら[購入ボタン]を押します。
- 7.これで[サブスクリプション名:従量課金](移行先サブスクリプション)の作成は完了となります。
2.移行先サブスクリプションの管理者の確認・変更
サブスクリプションの作成が完了したら、移行元となる既存サブスクリプションのサービス管理アカウントと移行先のサービス管理者が同一であることが必須条件となります。
移行先のサービス管理者を移行元のサービス管理者への変更を要する場合、以下の手順で確認及び変更をすることが可能です。
- 1.『アカウントポータル』に移行先のアカウントでサインインをします。
- 2.移行先のサブスクリプションを選択してクリックします。
- 3.右側にある『メニュー』欄から[サブスクリプション詳細の編集]の項目を選択します。
- 4.項目を選択したら『サービス管理者』の箇所を移行元の『サービス管理者』のメールアドレスに変更します。
これで移行先のサブスクリプションのサービス管理者の確認及び変更が完了致しました。ここで一度移行前の空からの状態にしておきます。ただし、『Active Directory』だけアカウントに紐づいて自動作成される場合がありますが、この点に関しては気にしなくて構いません。
3.移行データの事前評価
この工程は『マイクロソフトサイド』が、サブスクリプション間で移行の有無を事前に評価いたします。評価としては主に以下のものが該当します
- ・既存・新規のサブスクリプションで利用できるデータセンターに違いはないか。(サブスクリプションの種類(特典など)によっては、利用可能となるデーセンターに制限があります。)
- ・既存・新規のサブスクリプションで使っているクォータ数に違いはないか。
- ・事前チェックリスト中のサービスで移行できるモノの有無。
評価によってはユーザー自身で移行作業をするものがありますので、注意ください。詳しくは『第2節1項事前チェック』に記載されております。
4.マイクロソフトサポートまで移行作業のリクエスト
移行先となる新規サブスクリプションの作成、サービス管理者の確認・変更作業が済んだらいよいよ移行作業に入ります。ここからは以下のテンプレートを使用して必要事項を記述してマイクロソフト側に問い合わせしていきます。
- 1.既存のAzure管理ポータルにサインインして、画面右上にある[ヘルプとサポート]を選択します。
- 2.[新しいサポート要求]を選択して、インシデント作成画面を立ち上げます。
- 3.開いたら以下のことを記述していきます。
- ・問題の種類:サブスクリプションの管理
- ・サブスクリプション:[移行元のサブスクリプション]を選択
- ・サポートプラン:サブスクリプションの管理サポートを含む
- ・問題の重要度:[状況に応じたものを選択します}
- ・問題の種類:利用しているサービスを別のサブスクリプションに移行する
- 4.[詳細]のところには以下のテンプレートを使用して明記します。
- ・[必須項目]契約の移行に伴って、サブスクリプション間でのサービスの移行
- ・[1] 移行元サブスクリプションのサブスクリプションID(32桁)
- ・[2] 移行先の新規サブスクリプションのサブスクリプションID(32桁)
- ・[3] 利用しているサービスの各利用状況
- 1.アカウントポータルにアクセスして利用しているMicrosoftアカウントを使用してログインをします。
- 2.対象となるサブスクリプションをクリックします。
- 3.対象となるサブスクリプションの概要ページを立ち上げたら、右にある32桁のIDの確認ができます。
- 1.管理ポータルにアクセスしたら、確認方法で使用したMicrosoftフカウントでログインをします。
- 2.[すべてのアイテム]の箇所で表示されている[名前][種類]のリスト情報を低起用します。
- 3.ここで複数個サブスクリプションを表示している、他のサブスクリプション情報を含まないようにします。
- 5.[詳細]の情報の記述出来たら[次へ]を選択します。
- 6.次に連絡先を記述していきます。
- 7.記述が完了したら[送信]して移行作業が完了となります。
依頼事項
以下はIDと利用状況を確認する方法になります。
[1][2]:32桁のサブスクリプションIDの確認方法
[3]:利用している各サービスの利用状況
5.データ移行処理の実施
提供された情報を基に、移行作業をマイクロソフトサイドが実施を行います。移行先サブスクリプションのコア数については、移行処理の際に移行元のCore数と同じにされます。
また、移行作業中は管理ポータルでの管理が一時的に使用不可になるので事前に作業時間を調整しておく必要があります。
6.追加の手動作業
マイクロソフト側での移行作業が完了した後、移行元に残ったサービスをユーザー側で行う場合があります。
7.移行元のキャンセル
今後、移行元のサブスクリプションを利用しない場合は、解約作業を行います。これは必須ではありません。必要に応じて作業します。
4.まとめ
サブスクリプション間の移行作業に要する時間は、マイクロソフト側の作業都合と相まっているため、余裕をもって作業をする必要があります。また、移行できるもの、出来ないサービスがありますので移行作業をする際はあらかじめピックアップして整理しておくことが大切になります。