コンビニ経営におけるデータ収集と分析の基礎知識

はじめに

1970年代から展開を始めたコンビニエンスストアですが、今や利用したことのない人がいないほど、生活に根差した存在になっているでしょう。そんなコンビニエンスストアもこれまでの約50年間にさまざまな進化を遂げてきました。24時間営業や印刷機の導入、コンビニに並ぶ商品が話題になるほどの美味しさになり、コンサートのチケットを買うことができ、近年ではキャッシュレスに対応しています。また、店舗にレジを置かず、商品を持ちだすだけで決済が完了するコンビニが実証実験段階まで進んでいるという発表をされています。

コンビニがこのように消費者のニーズやトレンドをしっかりと掴み、より便利になっていく背景には、データ分析によるマーケティングがあるのです。
今回は、コンビニエンスストアの経営を支えるデータ収集と分析の基礎的な方法について、ご紹介いたします。

コンビニにおけるデータ収集方法

まずは、コンビニエンスストアにとって有効な手段であり、実際に導入されているデータ収集の方法についてご紹介いたします。

POSレジによるデータ収集

コンビニエンスストアを始め、多くの販売業で導入されているのがPOSレジです。

POSとは、「Point Of Sales」の略で、直訳すると「販売時点」という意味になります。POSレジでバーコードを読み取ることで、お店のレジで商品が売れた際のデータが収集できます。収集できるデータは、「どの商品」「いつ」「どの店舗で」「何個」「いくら」「どんな人が」といったデータです。これらのデータを集めて、分析を行うことで、売れ筋の商品や客足が増える時間帯などを読み取ることができます。

ポイントカードによるデータ収集

現在では多くのコンビニエンスストアでPOSレジから集められたPOSデータに加え、各社のポイントカードから得られるより詳細なデータが活用されています。

ポイントカードを利用することによって、同一人物の店舗や商品のリピート数やコンビニエンスストア以外での同じポイントカードを利用したときのデータなども収集することが可能です。また、利用者の会員登録が必要なポイントカードからは、年齢や家族構成、会社員なのか学生なのかといった、購入者本人のより詳細なデータも収集することができます。

SNSによるデータ収集

POSレジやポイントカードによって集められたデータは、主に購入者が購入をした際のデータですが、最近ではTwitterやInstagramといったSNSからもデータが集められています。

これらのSNSでは、投稿に対する反響や感想、トレンドの情報などがリアルタイムで収集することができます。スマートフォンの普及とともにSNSを利用する人も増加していることで、誰もが気軽に意見や情報を発信することができます。また、アンケート調査とは異なり、素の意見が投稿されることが多いため、購入者や消費者の本音を知るために有効な手段です。例えば、POSレジやポイントカードで得られたデータから、売上の高い商品を見つけ出し、どうして売上が高いのかSNSでデータ収集を行うことで、味がおいしいからなのか、テレビ等のメディアの影響なのか、パッケージがかっこ良いと思ったからなのかといった、商品を手に取るきっかけまで調査することができます。

コンビニにおけるデータ分析方法

これらの方法で集められたデータは分析することで初めてマーケティングに活用することができます。次に、コンビニエンスストアで集められたデータの有効な分析手法についてご紹介いたします。

メトリクス分析

メトリクス分析とは、集められた販売データを分かりやすい形に加工することです。

例えば、ある商品の売上数量の目標を立て、日ごとの売上計画を立てます。POSレジによって販売データを収集し、そこから指定の商品の販売個数を算出します。これらの日ごとの売上個数目標と実際の販売個数を縦棒グラフなどで表し、計画と現実の差がどれくらいあるのかがわかり、新たな販売促進のための施策を立てることができます。このように人の感覚だけでは判断しかねる局面において、データを見える化することで、適切な判断が可能となるのがメトリクス分析です。

ABC分析

ABC分析とは、集められたデータをA・B・Cの3つに分けて分析する手法です。

例えば、店舗内で販売している食品類の販売個数データを収集したとします。収集した販売個数の集計を行い、お弁当・デザート・パン・揚げ物・カップラーメンといったようにカテゴリーごとに分け、食品の売上はお弁当が50%、カップラーメンが20%、パンとデザートと揚げ物が10%ずつという結果だった場合、売上の占有が高い順からA・B・Cと分類していきます。売上を占める割合が高いほど、人気商品であり、在庫を切らさないように発注数を増やしたり、種類を増やすなどの在庫管理の判断に役立てることができ、またその店舗を利用する消費者たちがどんな商品を望んでいるのかといったニーズを知ることができるのがABC分析です。

終わりに

今回はコンビニエンスストアにおけるデータ収集方法とデータ分析方法をご紹介いたしました。

今回ご紹介した方法は、基礎的な方法であり、時代の変貌とともにより進化していきます。AIや新しいツールの開発によって、データの収集から分析まで人の手を介さずとも行えるようになるでしょう。しかし、どのデータが必要なのか、データによって分析された結果から、どのようなマーケティングを行っていくかといった意思決定は人が行います。IT技術によって、どのように収集・分析されているのかを知ることで、意思決定の手助けにもなるのではないでしょうか。

ありがとうございました。