高まるAIの重要性。AIの教育に必須の「アノテーション」と「アノテーションツール」とは?

「アノテーション」とは何か?

「AIを搭載したツールにより・・・」という文言を見かけることも増え、AIチャットツールなどを使ってより精度の高い検索を行えるWebサービスが登場するなど、現在のIT業界ではAIや機械学習がトレンドになっています。

「AI=人工知能」という知識は一般的だと言えますが、実際にどうやってAIが作られているのかだったり、そもそもAIはなぜ人工知能として動作しているのか?そしてAIが持つ情報や知識はどのようにインプットされているものなのか?ということをよく分かっていないという方もいらっしゃるかもしれません。

端的に言うと、AIも学習が必要です。AIはあくまでもプログラムであり、いまのところは人間のように自我を持ち自ら何かを率先して学ぶような生物的な動きはできません。様々なAIが存在しますが、それらのAIは人間がAIに必要な情報を与えて学習させた結果、現時点で保有する情報を扱えるようになったプログラムなのです。

そして、AIが情報を正しく取り扱えるように学習させることは「教師あり学習」と呼ばれ、現在の機械学習手法の主要なものの一つとして知られています。この「教師あり学習」というのは、入力されたものに対して、正しい出力(=回答)を返すことができるように学習させることで、これを行うためには「正しい出力パターン」をAIに学習させる必要があります。

この「正しい出力パターン」を「正解」だとする学習結果として、データ化して覚えさせるのが「アノテーション」です。「AをするとBになる」という事象があった場合、ユーザーが投げかけるのは「Aをすると?」という問いで、AIが返すのは「Bになります」という答えになります。しかし「どのようなAか」というのはいくつかパターンが存在することもあるため、画一的なだけではない「様々なパターンのAでもBになる」ということをAIに理解させ、覚えさせる必要があります。アノテーションというのは、この「様々なパターンのA」全てが「正解のデータを導き出すものだ」というデータベースのようなものを作る過程のことを言います。

アノテーションの重要度とは?

現代は大量のデータから様々な傾向を導き出してマーケティングに活かすことがトレンドになっています。過去から現在に至るまでの膨大な傾向を導き出せるのは大きなメリットなのですが、その情報を管理するためにはそれぞれのデータがタグ付けされ、必要に応じて抽出できなければ意味がありません。そのために必要なのが情報の管理になるわけですが、この際にアノテーションを行い、保有するデータの分類を行うことでデータ管理の緻密さと効率性が向上するのです。

AIの機械学習は、学習したデータがどのような正解パターンに紐付いていて、どのような回答を出力するのが正しいのかをパターン化しておかなければいけません。そのために必要なのがアノテーションだということになるため、現在ではAIと機械学習、そしてアノテーションはセットで語られる重要なファクターになっているのです。

AIアノテーションツールとは?

「アノテーション」が正しい出力パターンを学習させるためにいくつもの事例をデータ化し、AIに覚えさせることだということは説明しました。しかし、世の中にはパターン化とは言っても曖昧なものだったり、そもそものパターンが大量にありすぎて絞りきれないものがあるのも事実です。

このような場合に使われるのが「アノテーションツール」です。

「アノテーションツール」とは、前述した「教師あり学習」を行うための「教師データ」を作成して、アノテーションそのものを自動化・効率化するツールのことです。アノテーションツールを使うことで手作業よりもはるかに大量の教師データをAIに学習させることができるようになるため、AIの学習精度が格段に上がります。

ちなみに、アノテーションツールには画像、音声、自然言語など「認識させる対象」によって異なるツールがあります。そのため、対象としているAIが何を目的としたAIなのかに合わせて、使うアノテーションツールを選ぶのが良いでしょう。

アノテーションツールの主な機能

「AIの目的に合わせてアノテーションツールを選ぶのが良い」ということをご紹介しましたが、具体的にアノテーションツールにはどのような機能があるのでしょうか?もちろん、単一機能だけのアノテーションツールもあれば、複数の機能を持っているアノテーションツールもありますが、ここではどのような機能があるのかについてをご紹介していきます。

最も求められる機能と言ってもいいのが「対象の抽出とラベル分け」の機能です。例えばいくつかあるデータの中から対象となるものを選択しラベル付けしたり、音声データから文字起こしを行い、その文字起こしした単語にタグ付けするという作業の効率化を図る際に使われる機能です。

その名の通り、数ある画像やテキストデータの中から対象物を自動的に抽出してラベルを付与するところまでを自動化する機能です。自動化した後のデータに手動で修正を行うことも、もちろん可能です。

アノテーションそのものを拡張する意味合いもありますが、データ拡張を行う機能もあります。教師あり学習に使うデータサンプルを増やすために、任意のデータにある特定の処理を加えて別のデータとして増やすことができる機能です。なお、元データにそもそもラベル情報やタグ付け情報などが付与されていた場合は、増やしたデータに対して更にアノテーションを行う必要はありません。なお、これらのデータは複数の形式で出力することも可能です。使用するフレームワークによってAIモデルも違うため、データ出力を行う場合にも複数のデータ形式に対応していることが求められるからです。

さらに、作業の進捗状況を確認できる進捗管理機能も備えています。アノテーションツールによって行われている作業データをリアルタイムにチェックできますし、タグ付けしたデータに対してフィードバックを付与することもできるためレビューも含めた進捗確認が効率化できます。

複数存在するアノテーションツール。それぞれの比較ポイントは?

アノテーションツールには様々な機能があり、それぞれの機能に特化したアノテーションツールもあれば、複数の機能を持つアノテーションツールもあるということはご紹介しました。複数存在するアノテーションツールから必要なものを選択するのはどのような点を考慮すればいいのか?比較をする際のポイントについてご紹介します。

対象データの形式

ここまでにご紹介したように、アノテーション対象にできるデータというのは、使用するツールによって違うこともあります。例えば画像のアノテーションだけに対応しているツールがある一方で、テキスト、音声、動画全てに対応しているツールも存在します。

画像アノテーションツールだけをとっても、分野ごとに特化した画像ソリューションを提供しているものもありますし、複数の分野を横断したアノテーションを行えるツールがあるため、アノテーションツールを導入する際には自社のサービスとしてどのようなAIを活用するのか?自社で活用・採用するAIにどのような機能を持たせ、そのためにはどのような教師データが必要になるのかということを明確化しておく必要があります。

対象データの抽出方法

アノテーション対象とするデータの形式と同様に、必要なデータを抽出するための抽出方法にも注意が必要です。必要なデータを集めて教師データを作るのがデータ抽出の目的になるわけですが、正確に必要なデータを抽出するためには適切な抽出方法を持ったアノテーションツールを使う必要があります。

画像抽出の方法だけをとっても、複数の図形を使ったものや指定した場所にポイントを打ってそこを基準に抽出する方法など、様々な抽出方法があります。使い方によってはPDFなど、通常であれば編集できないドキュメントデータの中から、必要な固有表現などを抽出できる方法もあります。

作業管理機能があるかどうか

アノテーションを行う担当者は1人だけとは限りません。AIへの教師あり学習を行うプロジェクトが複数同時進行になっている場合もあり得ますから、その場合はそれぞれのプロジェクトに担当者が存在することになります。また、プロジェクトの規模によっては1つのプロジェクトでも複数人で作業を分担するケースもあるので、ローテーションで1つの作業を行うことも考えられます。

このようなケースでは現在行っているアノテーションの進捗管理や、作業自体の支援機能があるツールが求められます。既にタグ付けが終わった画像にコメントを追加し、作業を行った担当者に対するフィードバックを行うことが可能なツールもあります。このような機能を使えばスケジュール管理を行うことも容易になりますし、作業になにか不備があったとしても修正するポイントをわかりやすく共有することが可能です。

さらに高機能なアノテーションツールでは、メンバー管理機能やバージョン管理機能などを搭載したものもあるため、プロジェクトの規模や実行する作業に応じて様々なツールを検討するのが良いでしょう。

アノテーションの需要は今後も高まっていくと予想される

ここまでご紹介してきたように、AI技術の開発にはアノテーションが不可欠です。そして、アノテーションを行うためのアノテーションツールは今後ますます重要度を増していくと考えられています。

既にクリエイティブ分野においてもAI技術が浸透し始めており、イラストやプログラミングなど人間の創造性が不可欠だと言われていた分野でもAIの活用が始まりつつあります。しかし、そのような作業をAIが実際に行うためにはアノテーションによりAIを教育することが必須です。そしてこのAIに対する「教師あり学習」を行うためには適切なアノテーションツールが必要になるのです。

私達の生活で身近なAIというと、iPhoneに搭載されている「Siri」やAmazonの「エコー」、Googleの「Bard」などがありますが、これらのAIでは対応分野が日々拡張しています。もともとは「Siri」も音声認識のみと思われていましたが現在はその範囲を拡大し始めており、アップル製品ユーザーの日常生活における深い部分までどんどん浸透し始めています。このような現状からも、アノテーションとアノテーションツールに対する需要は今後もどんどん高まっていくでしょう。

まとめ

ここまで、アノテーションとはどのようなものか?アノテーションを行うために使われるアノテーションツールとはどのような機能を持っているものなのかということをご説明し、アノテーションツールを選択する際のポイントや、アノテーションツールが今後も需要が高まるものであることをご紹介してきました。AIの活用が拡大・浸透していくことを念頭に置き、必要なデータ形式や必要なツールがどのようなものなのかを調査しておくと良いでしょう。