SharePointで承認ワークフローを作成する
はじめに
承認作業で以下のような経験をした人は多いのではないでしょうか。
・印鑑をもらって回るスタンプラリーは承認者が外出していて進まない
・メールで回覧すると決まって放置される
今回はSharePointを使って承認ワークフローを作成するメリットと、実際の作成方法について解説します。
SharePointを使ってワークフローを作成するメリットデメリット
ワークフローを使用しないデメリット
まずはじめに、ワークフローを構築しなかった場合の状況を見ていきましょう。ワークフローを使用しないと、申請者にも承認者にも承認作業がストレスになります。
申請者のストレス
スタンプラリーで承認作業を行う場合、承認者が外出していたり、パソコンが開けない状況下にいたりした場合、承認作業が進まないということになってしまいます。今日中に承認して欲しいのに承認者が出張で帰ってくるのは明日、というようなことも少なくありません。申請者にとって「待ちの状況」が発生してしまいます。
また、メールで承認を求めるといっても、課長や部長などの役職を持つ上司が承認者となっていることが多いでしょう。役職を持つ上司は他にも様々な承認をすることが多いのでメールがそのまま放置されることがありますが、そうなると再度催促のメールを送るかどうかを考慮しなければなりません。しかし、申請者からすると、上司は忙しいのに急かすように再度催促をするのもいかがなものか?と、メールの送信を渋ってしまうというような経験は皆様にもあるのではないでしょうか。
承認者のストレス
スタンプラリーで書類を持って来られると自分が対応しているタスクを一時中断しなければならず、頻繁に書類を持って来られるとその度に作業を中断するのが煩わしくなります。だからといって、申請書の提出箱を用意していると夕方には申請書で溢れかえってしまい見る気をなくしてしまいます。都度承認する必要があり、自分の時間で承認対応することができなくなってしまいます。
また、メールで承認を求められた時も、わざわざ添付ファイルを開いて電子印を押さなければならないという作業が発生します。その分オペレーションが増えて工数が取られてしまうため、結局自分の対応しているタスクを後回しにすることが多くなります。
このように、印鑑をもらって回るスタンプラリーのようなフローだと、申請者にとっても承認者にとっても非常に手間がかかり、デメリットが多いです。このような状況を解決するためにも、ワークフローシステムの構築は重要になります。
ワークフローシステム導入のデメリット
面倒な作業を減らすためにワークフローシステムを導入しようとしても、面倒くささが解消されるというメリットと同時にデメリットも発生することになります。
サーバが必要
ワークフローシステムを導入するにはサーバを用意したり、外部からアクセスできるようにドメインを取得したりするなど、様々な作業が必要になります。自社の社員で全て完結できるのであれば、時間の問題のみで済むこともありますが、自社の社員にサーバ構築や外部へ公開するための知識や技術がなければ、外部サービスを頼らざるを得ません。
コストが掛かる
サーバを社内で用意して運用するのはあまり現実的ではありません。そこで、クラウドサービスという選択肢があります。1ユーザ当りいくらという金額でクラウドサービスを利用することで、サーバを用意することなくワークフローシステムを導入することが可能です。
しかし、ユーザ当りの金額は安くても1ヶ月で300円~となっています。300円と聞くと安く感じるかもしれませんが、10人が使用すると3,000円/月となりますし、30人が使用すると9,000円/月となります。年間で見ると10人が使用すると36,000円、30人が使用すると108,000円となり、ユーザーが増えれば増えるほどコストがかさみます。
それだけのコストを掛けたとしても、思っていたワークフローと異なっていたり外出時にスマートフォンからでは操作ができなかったりするかもしれません。
SharePointの導入のメリット
SharePointを導入するメリットは、ワークフローが利用できるほかにも資料の共有化や同時編集ができるといった点も挙げられますが、今回はワークフローにのみ着目して紹介します。
SharePointのコストメリット
SharePointで作成したワークフローを利用する場合、全ての利用者がSharePointを利用できるプランに入らなければならないという訳ではありません。SharePointを利用できるプランに入る必要があるのは、ワークフローを作成するためのサイトを準備する人のみです。
SharePointを利用できるプランを以下の表にまとめましたので、ぜひ参考にしてみてください。価格を見ても分かるように、契約するのは1人のみで良いのでコストダウンに繋がるということがお分かりいただけるのではないでしょうか。
プラン | 価格(ユーザ/年) | Office |
---|---|---|
Microsoft 365 Business Premium (*1) | \16,320 | ○ |
Microsoft 365 Business Essentials (*2) | \6,480 | △(*3) |
SharePoint Online Plan 1 | \6,480 | × |
SharePoint Online Plan 2 | \13,080 | × |
Microsoft 365 E1 | \10,440 | ○ |
Microsoft 365 E3 | \26,040 | ○ |
Microsoft 365 E5 | \45,720 | ○ |
*1 : 2020/04/21までの名称で、2020/04/22以降は「Microsoft 365 Business Standard」となる
*2 : 2020/04/21までの名称で、2020/04/22以降は「Microsoft 365 Business Basic」となる
*3 : Web版およびモバイル版のOfficeのみ利用可能(PCへのインストールは不可)
SharePointで任意のワークフローを作成できる
後述しますが、SharePointを使用することで任意のワークフローを簡単に作成することが可能です。実際に作成したワークフローは、運用する中で改善点があれば自社で変更することができます。
また、ワークフローの作成をするためにSharePointが利用できるプランを契約する必要はありません。SharePointは「サイト」と呼ばれるものを作成し、作成したサイトに招待することで複数人での共同作業を可能にしています。
勝手にワークフローを開始することができる
通常、ワークフローを回す場合は申請者自らがワークフローを開始しなければなりません。SharePointで作成したワークフローでは、申請書を作成したら勝手にワークフローが開始するように設定することも可能です。
スマートフォンからでも申請・承認が行える
SharePointはスマートフォン用のアプリが容易されているため、出張などの外出時でもスマートフォンから申請や承認を行うことができ、時間や場所を選びません。ここがストレス軽減の一番のポイントです。
SharePointを使って承認ワークフローを作成する方法
実際にSharePointを使って承認ワークフローを作成する方法について説明します。今回はサイトを作成するところから説明したいと思います。
サイトの作成
SharePointの起動
ブラウザでMicrosoftのMicrosoft 365のサイトにアクセスし、SharePointを利用できるユーザでサインインします。サインインした画面で下図の赤枠部分をクリックします。
SharePointへ遷移するので、下図にあるようにヘッダのすぐ下にある「+サイトの作成」をクリックします。
新しいサイトの作成では「チームサイト」を選択します。
下図のようにサイト名など必要事項を記入した後に「次へ」ボタンをクリックします。この時、グループメールアドレスにはメールアドレスの@よりも前に使用したい文字を入力します。ここで入力した文字がサイトのアドレスにも使用されます。
「グループ メンバーの追加」では所有者やメンバーの追加ができますが、ここでは空欄で構いません。なお、デフォルトとしてログインしたアカウントが所有者になっているので、ログインしたアカウント以外で所有者を追加したい場合にのみ入力します。ただし、メンバーの追加も含めて、ここでは同一ドメインのメールアドレスを持っている人でないと追加できません。
後述しますが、ゲストメンバーとして追加する必要があるため、ここではそのまま「完了」ボタンをクリックします。
これでサイトが作成されました。
ゲストメンバーの追加
ここでゲストメンバーを追加します。ページ上段の右側にある下図の赤枠部分をクリックします。
次はそのまま「メンバーの追加」ボタンをクリックします。「名前またはメールアドレスを入力します」と書かれた入力フォームには何も入力せずに、「Outlookに移動」のリンクをクリックします。
Web版のOutlookが開きますので、ヘッダすぐ下にある「メンバーを追加」をクリックします。
以下のようなポップアップが表示されるので、「メンバーの追加」に追加したいメールアドレスを入力します。全て入力すると下図のように「ゲスト」と表示されるので、「Enter」キーもしくはゲストと表示されているカードをクリックします。
下図のように追加したいメールアドレスが正しく表示されていることを確認して、「追加」ボタンをクリックします。
下図のように追加されたことを確認したら「閉じる」ボタンをクリックして、ポップアップを閉じます。
ワークフローの作成
リストの作成
準備が終わったので、ワークフローを作っていきます。今回は会議費申請のワークフローを作成します。
まず、「リスト」というものを作成します。下図のようにヘッダのすぐ下にある「+新規」をクリックして、表示されるプルダウンの「リスト」をクリックします。
ページの右側に「リストの作成」がポップアップされるので、適当な名前を入力して「作成」ボタンをクリックします。
「列の追加」をクリックして表示されるポップアップから追加したい列を選択します。今回は以下を追加します。
申請者:個人
申請日:日付
申請先:個人
ステータス:選択肢
却下理由:複数行テキスト
下図のように適用な値を入力して、下部にある「保存」ボタンをクリックします。これを追加する列の個数分行います。
Flowの作成
リストができたので、Flowを作っていきます。ヘッダのすぐ下にある「Flow」をクリックして、表示されるポップアップ内の「フローを作成」をクリックします。
ページの右側に「フローの作成」が表示されるので、今回は「新しいアイテムが追加されたときに承認を開始する」をクリックします。
「Power Automate」というページに遷移するので、そのまま「続行」をクリックします。
下図のようなフローが表示されるので、適当な値を設定して「保存」をクリックします。このとき、「Assigned To」には「申請先 Email」を設定しておきます。
これでワークフローの作成は終わりです。
ワークフローの動作確認
作成したワークフローが正常に動作するか確認します。
「+新規」をクリックします。
右側に表示される「新しいアイテム」に適当な値を入力して「保存」ボタンをクリックします。
下図のように入力した値が表示されます。
下図の内容が記載されたメールが「Assigned To」に設定した「申請先 Email」に届きます。実際の確認では「リンク」を開いて内容を確認し、「ステータス」を変更して、「承認」もしくは「拒否」を選択することでワークフローを進めます。
先の「Power Automate」で「承認」もしくは「拒否」の場合にステータスをどう変更させるかを設定しておけば、承認者がステータスを変更しなくとも勝手に変更されるようになります。
まとめ
SharePointで承認ワークフローを作成するメリットとその方法は参考になったでしょうか?
・SharePointの使えるプランを契約するのは1人で良い
・SharePointはスマホアプリがあるので、時間と場所を選ばすに申請・承認作業が可能
・承認ワークフローの作成に柔軟性があり、運用しながら変更することが可能
ワークフローの作成に慣れるととても簡単に作成することができ、また、コストをあまり変えずに社内でワークフローシステムを構築することもできるようになります。承認ワークフローは申請業務のみならず応用の幅があるので、煩わしい業務をシステム化して業務の効率化を目指していきましょう。