IT業界の人材不足が抱える課題と魅力

市場の拡大が引き起こす人材不足

 
 まずは、IT業界の人材不足を引き起こしている原因について3つ挙げてみたいと思います。1つ目は「IT市場及びWeb業界の成長が急速に拡大している」点です。これには、IoTやSaaSビジネスなどの台頭によって、一般企業においてもIT技術を積極的に取り入れていることが影響しているようです。一見、IT企業というカテゴリに含まれない企業であっても、ITに一切関連がない企業はほとんどないのではないかと思うほどにIT技術の需要は高まっています。また、ITの広がりはビジネスの場だけではありません。近年のアプリやSNSの発達を踏まえると、パーソナルな面から見てもウェブやシステムが日常生活に身近であることを誰しもが感じられるのではないでしょうか。このようにIT社会の急速な発展によって、私たちの日常は、ますます便利で快適に過ごせるようになっています。さらなる発達に向けて企業が必要とするプロバイダーの数は物理的に増えていく一方で、人員の増大が追い付かず人材不足を加速させている現状があるようです。

市場のスピード感がもたらす人材不足

 次に「IT市場におけるトレンドの移り変わりが速い」点です。今に始まったことではありませんが、とにかく新しいツールの開発や、言語の変化や方法論の創出サイクルなどが速い業界です。変化や進化のスピードが速いため、新しい技術の習得を目指して勉強したとしても、習得する前にさらに新しい技術が生み出され、廃れてしまうことすらあるほどです。そういった変化にエンジニアが適応できず追いつかなくなることで、企業側の需要に適合するスキルをもったエンジニアは必然的に少ない現状にあると考えられます。

IT業界の需給と少子高齢化

 3つ目は、冒頭でも挙げたように「少子高齢化の進行」が影響していると考えられ、特に大きな原因なのではないでしょうか。長きにわたる少子高齢化と人口減少は、確実に労働人口減少の原因となっており、IT業界に限わらず影響が及んでいます。先に記述したようにIT市場及びWeb業界の成長は急速に拡大しており、トレンドの移り変わりが速い業界です。したがって、現行のプログラムのベースを構築していたエンジニアの高齢化や退職により人材不足が発生している状況があります。また、現在のトレンドが先端IT分野と呼ばれるIoTやAI技術であることに対して、経済産業省が発表した「IT人材需要に関する調査」によると、先端IT分野の人材不足は2020年では約6万人、2030年には約38万人も不足すると試算されています。先端IT分野は特に高いスキルを必要とする一方で、IT業界に興味・関心がある若い方でも、そもそもIT技術に対して「難しい」「複雑」といったネガティブなイメージをもつ方も少なくないのではないでしょうか。つまり労働人口の減少と市場の拡大が同時に発生していることが最大の原因であると考えます。

チャンスに溢れるIT業界

 これまでに、「市場の急速な拡大」「トレンドの移り変わり」「少子高齢化」と、人材不足を引き起こす3つの原因を挙げてきました。それぞれ重大な課題であり、解決が難しいからこそ事態が深刻になっている現状があります。しかしこれらの課題から、むしろIT業界がチャンスのあるフェーズにあることを意味していると捉えることもできます。例えば、市場が急速に拡大している点について、IoTもSaaSも興味や関心が無い限りは聞きなじみの無い言葉かもしれませんが、実はGmailやSkype、twitterといったSNSやツールなどもSaaSです。ITの知識が無くとも当たり前に誰しもが使いこなせているのではないでしょうか。それほど身近にIT技術は存在し、比較的スムーズに習得できる可能性を多くの方が保持していると言えます。また、頻繁にトレンドが移り変わることについては、それだけ間口が広く伸びしろのある業界であることを示唆しており、最近では手軽に独学でプログラミングを学ぶこともできます。私自身もプログラミングの学習を行う過程で、論理的な思考力や問題解決能力など、普遍的な力が蓄積されていくことを感じられています。そういったビジネスマンとしてのスキルアップができる分野、業界であるにも関わらず人材不足が発生している現状を踏まえると、誰にでもチャンスがあり学習を積めば積むほど新しいことに挑戦できる点が魅力と言えるのではないでしょうか。聞こえが良く書きましたが、実際に業界内を見渡しても、特に現在のトレンドである先端IT分野(AI・機械学習)のプロジェクト参画者は、比較的若いメンバが主体となり、今後も引き続き需要が高まっていくと考えられます。また、身近にあるからこそ、業務で培った知識が、知らず知らずのうちに日常生活をより快適に過ごす上でのテクニックやリスク管理に役立つこともあるほどです。私自身もIT業界の人材不足を知り、未経験から業界入りした経緯がありますが、「働くことが生きることに繋がる点」は大きな魅力であると感じます。

まとめ

 現実的に、人材不足は非常に深刻な局面にあります。ただ、IT企業の社員でなくとも日常においても当たり前にIT技術が溢れている現代において、IT人材の需要は増す一方です。チャンスの多い業界・分野でもあるため、少しでも興味のある方はネガティブなイメージを払拭しチャレンジしてみると良いかもしれません。

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