IT業界の設計士「ITアーキテクト」とは
ITアーキテクトとは
まず、「アーキテクト」とは建築家や設計者といった意味を持つ英単語です。すなわちITアーキテクトとは、企業を「経営戦略」と「システムの開発」という2つの側面からサポートしていく設計士のことです。一般的には、仕様や要件定義などシステムの根本から方向性や仕組みまで、企画検討・提案、さらには運用・保守要件までを提示することのできる技術者を総称してこう呼ぶことが多いでしょうか。以上のことからもITアーキテクトは重要な役割を担っている職種であり、プログラマーやシステムエンジニアとは異なる多種多様な知識やスキルを保有していることが求められることがお分かりいただけたでしょうか。IT業界の急速な発展によって、最近では一般企業においても例外なくIT技術を活用する機会が増加しているため、その需要も高まっている職種です。余談ですが、一般的にITに精通しており高いスキルを有している人を「ITスペシャリスト」と呼ぶこともあります。これは職種ではなくIT技術において特化した分野がある専門家を総称した言葉です。具体的にはネットワークやデータベース、システム管理、セキュリティのいずれかにおいて精通している分野を持つ人材のことです。そして肝心のITアーキテクトとは、そういったITスペシャリストとしての知識にさらに経営的視点を加えた存在です。ITスペシャリストからキャリアアップをする際に代表的なキャリアパスの1つとして挙げられますが、容易に担えるポジションではなく、難しい職種である一方で、その対価も高く設定されていることが多く、プロジェクトのキーマンとして関わることが出来る点は魅力的であり、大変やりがいのある職種でもあります。
ITアーキテクトの業務
ITアーキテクトの主な業務は、企業を、経営戦略及びWebシステムの開発という両面からサポートしていくことです。企業がIT技術を導入する目的として、業務効率化やコスト削減等が挙げられるかと思いますが、その際企業は様々なフェーズに対して投資を行うことになります。その中でも特に戦略情報化企画の策定や開発フェーズに際してITアーキテクトは中心的な役割となります。ITアーキテクト以外にもプロジェクトマネージャーやITスペシャリストなどが参加し、経営戦略や課題に対して解決策となるようなシステムの構築を行っていくわけですが、その中でもITに関する専門的な知識を複合的に使い、最適化された構成を作り出すことが求められます。ではITアーキテクトとして求められる専門性はどういったものなのか、3つの専門分野について見ていきます。
専門分野3つとITアーキテクトとしての役割
ITアーキテクトの専門分野について3つ紹介します。①アプリケーション・アーキテクチャ②インテグレーション・アーキテクチャ③インフラストラクチャ・アーキテクチャの3つがあります。簡単に解説するとアプリケーション・アーキテクチャとは業務的な機能設計や、ユーザーの操作性を意識した設計を行うことです。また、インテグレーション・アーキテクチャは、企業内や企業間における統一可能な部分の連携を目的とする設計のことです。そしてインフラストラクチャ・アーキテクチャとは、セキュリティやプラットフォームを中心とするインフラにおける設計のことです。また、「開発」フェーズにおいては構築済みのアーキテクチャに従って、Webシステムを設計していくわけですが、このフェーズにおいて上記した3つの専門分野ごとに、その構造全体の整合性を管理していくことが主な役割です。
ITアーキテクトとして必要なスキル
これまでにITアーキテクトの業務内容が多岐にわたり、裾野の広い業務知識や専門性も求められることが分かったかと思いますが、ここではITアーキテクトになるために必要なスキルはその他どういったものがあるのかを確認していきます。まずは、「設計技法に精通していること」が挙げられます。ITアーキテクトが設計士のような立場であることを説明しましたように、システムやアプリケーションの全体像が誰の目から見ても分かりやすいように設計することが重要であるため、様々な技法を駆使する必要があります。また、プロジェクトのキーマンとしての役割を担う以上、クライアントやエンジニアとの情報交換や意思疎通なども欠かせず、ときとしてメンバーの指導を行う機会もあります。したがって卓越した「リーダーシップ」や「コミュニケーション能力」も必要です。その他、プロジェクトを成功に導くために、的確な人員配置やコストなどの危機管理を行える「マネジメント能力」も求められます。ITアーキテクトは、技術力だけでなく高いヒューマンスキルも兼ね備えている必要があり、途方のない道のりに思えますが、むしろそれらのスキルを身に着けていく過程でIT業界での大きな成長や、やりがいを感じることが出来そうです。
まとめ
ITアーキテクトになるためには、システムに対する幅広い専門性や高い技術力、優れた人柄を要するため、その道のりは決して楽とは言えなさそうです。しかし、それに見合う高い報酬や待遇、大きなやりがいや達成感が得られる職種です。したがって今後も見込まれるIT需要の拡大や将来性を踏まえても、キャリアアップの目標として掲げてみるのもいいかもしれません。
