オンラインマルチプレイゲームの開発に力を発揮するツール「Amazon GameLift」とは?


Amazonのクラウドサービス

Amazonは消費者レベルにおいてはインターネット通販の世界最大手として知られています。しかし、それ以外でもAmazonが世界市場で大きなシェアを持っているビジネスがあり、それが「クラウドサービス」の分野です。

Amazonは、Amazon Web Services=通称AWSというクラウドサービスを提供しており、AWSは大規模な総合クラウドサービスの分野で世界最大規模の市場シェアを誇っています。AWSはコンピューティング、ストレージ、データベース、ネットワーク、分析、機械学習などの分野で利用できる様々なクラウドサービスを揃えています。

AmazonがAWSを通じて提供しているクラウドサービスの中で最も一般的に知られているのは仮想サーバーサービスと仮想ストレージサービスでしょう。「場所を問わずに、いつでもアクセスできる」というクラウドサービス最大の特徴が最も活かされるサービスの1つとしてあげられるのが仮想サーバーと仮想ストレージサービスですが、プロジェクトの進行状況も含めて共有化する、という考え方をすれば、開発環境やデータベースに関してもクラウドサービスを利用するメリットは大きいと言えるでしょう。

AWSは低コストで、自動化可能かつ柔軟なスケーラビリティを持つクラウドサービスの普及を一貫して行っています。価格に関しては従量課金性で、いわゆる「使った分、必要な分だけを支払う」形式を取っており、毎月一定額が必ず必要になるというコスト設計にはなっていません。

もちろん、必要だからということで必要な機能やサービスを毎月継続して使用していれば、それは月額固定のようなイメージのコストになることもあり得ます。しかし、AWSの場合は「使わなくても一定額の支払が必要」なわけではなく、あくまでも「必要なものを使った分だけ支払う」という形式になっています。そのため、かかるコストに無駄がないというメリットがユーザー側に生まれるのです。

一般化するクラウドサービス

現代ではクラウドサービスの利用が個人か法人かを問わず一般化しており、ローカルストレージに保管せずにクラウドストレージにほとんど全てのデータを保管したり、Eメールを始めとしてクラウドベースのサービスを日常的に使うことが世間的にも当たり前のこととして受け入れられています。

特に法人利用においてはAWSの他にもMicrosoft AzureやGoogle Cloud Platformなど、メガベンダーによる大規模クラウドサービスの展開が進んでおり、世界市場全体でクラウドサービスの積極的な利用が様々な業界で当たり前のことになりつつあります。

Amazonがクラウドサービスで取り組んでいる意外な分野

Amazonはインターネット通販の世界最大手であることはいまや常識で、さらにクラウドサービスの分野でも世界シェアが最大級であることをご紹介しました。

AmazonがAWSを通じる業界は多岐に渡っていますが、その中には意外な業界も含まれていることは、一般的には知らない方もいるかもしれません。

実はAmazonはゲーム業界向けにもクラウドツールを提供しています。

Amazonはクラウドサービスを通じて、ゲーム業界における開発業務をより効率的でスケーラブルなものにするという方針を掲げています。クラウドサービスを使うことで開発者がゲーム制作に集中し、開発用のインフラ管理など、実際の開発業務から少し離れた業務に費やす時間をなるべく最小限に抑えられるようになることを目指しています。

このような取り組みはゲーム業界全体からも大きな支持を得ており、FPSのジャンルで世界的に多くのプレーヤーを抱えるメジャータイトルを含めた数千以上のゲームが AWSのサービスを使って稼働しております。現在、Amazonはゲーム業界全体への投資を強化しており、ゲーム業界で要求されている機能を盛り込んだサービスの提供を継続していくと表明しています。これはゲーム業界にとっては追い風で、世界的にシェアが高く、なおかつインフラの強度に定評があるAmazonのサービスを活用することで、開発するゲームの革新性を高め、より没入感の強いゲーム体験を提供できる可能性が高まるのではないかと期待されているのです。

AWSのゲーム用プラットフォーム「Amazon GameLift」

AWSが提供するクラウド上でゲームを開発し、運用及びホストし管理するためのサービスが「Amazon GameLift」です。主に大規模なオンラインマルチプレイヤーゲームを開発し、運用するためのサービスで、現在世界中で人気の多人数同時プレイFPSなどがAmazon GameLift上でホストされていることが知られています。

では、Amazon GameLiftはなぜゲーム開発に使われているのでしょうか?それにはいくつかの明確な理由があります。

スケーラブルなゲームサーバーのホスティング

GameLiftはプレイヤーの需要に応じて自動的にスケーリングするゲームサーバーのホスティングを提供しています。これにより開発者はゲームのパフォーマンスを最適化し、サーバーの空き容量を最小限に抑えることが可能になります。

フリート管理

GameLiftは、複数のゲームサーバーをグループ化して管理することができます。このグループのことをフリートと呼び、フリートは地域や構成を変えて展開することが可能です。開発者はこれらを簡単に管理することができます。

自動スケーリング

GameLiftは、プレイヤーの需要に合わせてサーバーの数を調整できるため、ピーク時には需要に応じたサーバー数を提供し、非ピーク時にはコストを削減することができます。つまり、ゲームサーバーのリソースをプレイヤーの需要に応じて自動的にスケーリングすることができるため、プレイヤー数が増減した際も迅速に対応し、コストを最適化することが可能なのです。

マッチメイキング

GameLiftは、プレイヤーを彼らのスキルレベルやプレイスタイルに基づいてマッチングすることができます。どういうことかというと、この機能があることであるプレイヤーがオンラインマルチプレイをする際に、自分の実力と大きな差がある別のプレイヤーとマッチングすることがなくなるということです。特にオンラインで対戦を行う形式のゲームの場合、ゲームの勝敗によりプレイヤーのレーティングなどが決定され、その後のゲームプレイ内容に大きな影響を及ぼすことがあります。例えば自分よりも大幅に実力が上のプレイヤーとマッチングしてしまうと、ゲームに負けてレーティングが下がることになってしまいます。このようなミスマッチを減らす仕組みを使えることで、プレイヤーは自分に最適なゲーム体験を楽しむことができます。

GameLiftは独自のマッチメイキングシステムを構築する必要なく、サーバーレスのフレキシブルなマッチメイキング機能を提供しできるので、プレイヤーのスキルやプレイスタイルに応じた適切な対戦相手を見つけることができます。

リアルタイムメトリクスとログ

GameLiftは、ゲームのパフォーマンスに関する詳細なメトリクスとログを提供します。これにより、開発者はゲームのパフォーマンスを監視し、問題を迅速に特定して対処することができます。

クロスプラットフォームプレイ

GameLiftを使った開発を行うことで、より簡単にPC、モバイル、コンソールなどの異なるプラットフォームでのプレイを可能にできます。その結果、より多くのプレイヤーにゲームをPRできることになり、最終的に多くのユーザーにリーチして作品の売上などを伸ばすことに繋がります。

ゲーム業界でもインターネットに接続し、なおかつ複数のプレイヤーが同時に同じゲームにアクセスするオンライン形式のプレイが一般化しています。一方で、ゲームをプレイするためのプラットフォームはコンシューマー機、スマートフォン、タブレット、PCと複数存在しています。中には1つのプラットフォームだけでゲームをプレイしているプレイヤーもいますが、普及度が低いプラットフォームでプレイしているプレイヤーは、普及度の高いプラットフォームのプレイヤーと交流の機会を持つことができなくなってしまいます。

そのため、ここ数年では複数のプラットフォームをまたいで同じゲームにアクセスできるクロスプラットフォームプレイ可能なゲームが広がりを見せており、ユーザーもクロスプラットフォームプレイを望むようになっています。


フレキシブルなデプロイメント

開発者は、GameLiftを通じてAWSのグローバルインフラストラクチャを活用し、<ゲームサーバーを世界中のリージョンにデプロイすることができます。/mark>これにより、プレイヤーがいる場所に応じた最適なパフォーマンスを提供することができるでしょう。

シンプルな料金設定

GameLiftは、利用したリソースに応じた料金設定がされており、余分なコストを抑えることができます。開発者は、必要なリソースだけを利用してコストを最適化することができます。

AmazonはなぜGameLiftに力を入れているか?

これまでにご説明してきたGameLiftの各機能は、大規模なオンラインマルチプレイヤーゲームの運用に必要なインフラとスケーリングの問題を解決することを目的としています。

Amazonは、GameLiftを含めたクラウドサービス全般に力を入れています。GameLiftの場合は、セッションベースのマルチプレイヤーゲーム向けのマネージド型ゲームサーバーサービスとして提供されていて、既に解説したようにゲーム開発者がゲームサーバーを管理・拡張する手間を省くためのサービスです。

AmazonはGameLiftのほかにも、Amazon Elastic Compute Cloud(=EC2)、Amazon Simple Storage Service(=S3)、Amazon Relational Database Service(=RDS)など、多くのクラウドサービスを提供しており、仮想サーバーや仮想ストレージサービスの分野で世界シェア1位を誇っています。これらのサービスは、ゲーム開発者がゲームを開発・配信するために必要なインフラを提供しています。

ゲーム業界では1つのゲームタイトル開発のために多くの人が関わっており、近年では開発期間も長期化しています。様々な国や地域をまたいだ開発チームになっていることも多く、完成したゲームもグローバル展開のためにインフラ強化を並行して実装しておく必要があるため、強固なインフラを持つAmazonのリソースはゲーム業界にとっても魅力的なのです。

言うまでもなく、Amazonはクラウドサービス市場で主要なプレーヤーです。Amazonのクラウドサービスは、世界中の企業や組織に使用されていて、そのインフラ品質や安定性は高く評価されています。これはゲーム業界からの評価も同様であるため、Amazonはクラウドサービスへの投資を継続し、ゲーム開発者がゲームを開発・配信するために必要なインフラを提供していくと予想されているのです。

Amazon GameLiftを利用するメリット

Amazon GameLiftがゲーム開発に向けたツールであり、主にオンラインマルチプレイ用のゲーム開発に適しているということは既にご説明しました。では、具体的にAmazon GameLiftを利用するメリットにはどのようなものがあるのでしょうか?いくつか代表的なメリットについて解説します。


ゲーム開発者の負担軽減

Amazon GameLiftを利用することで、ゲーム開発者はゲームサーバーの管理や運用にかかる時間と負担を軽減できます。その結果、ゲームの品質やプレイヤーエクスペリエンスに集中し、より優れたゲームを作成することができるでしょう。例えば、Amazon GameLiftを利用することで、ゲーム開発者はゲームサーバーのセットアップや管理にかかる時間を大幅に短縮できます。これにより、開発者はより多くの時間をゲームの開発や改善に費やすことができ、プレイヤーエクスペリエンスを向上させることができます。例えば、ゲームのサーバーが安定しているため、プレイヤーはよりスムーズにゲームをプレイすることができ、より良いゲーム体験を得ることができます。

より良いプレイヤーエクスペリエンスの提供

Amazon GameLiftの自動スケーリングやマッチメイキング機能により、プレイヤーはスムーズで快適なゲームプレイを楽しむことができます。例えば、プレイヤーがゲームにログインすると、GameLiftは自動的に必要なサーバーを起動し、プレイヤーの数に応じてスケールアップします。また、マッチメイキング機能により、プレイヤーは適切な相手とマッチングされ、より楽しいゲームプレイが可能になります。これにより、プレイヤーの満足度が向上し、ゲームの成功につなげられるというのがメリットです。

コスト効率の向上

Amazon GameLiftのシンプルな料金設定と自動スケーリング機能により、開発者は必要なリソースだけを利用してコストを最適化できます。これにより、開発コストを抑えつつ、品質の高いゲームを開発することが可能です。例えば、あるゲーム開発者がAmazon GameLiftを利用して、新しいゲームのローンチを計画しています。彼らは、最初は少数のプレイヤーしか想定していないため、必要なリソースが限られています。しかし、ゲームが人気を集めるにつれて、プレイヤー数が急増する可能性があります。この場合、Amazon GameLiftの自動スケーリング機能により、必要なリソースが自動的に増減されるため、開発者は常に必要なリソースだけを利用し、コストを最適化することができます。また、シンプルな料金設定により、開発者は予算内でゲームを開発することができ、品質の高いゲームをリリースすることができます。

Amazon GameLiftの始め方

ここまでご説明してきたように、オンラインマルチプレイのゲーム開発や運用に大きな期待を寄せられているAmazon GameLiftですが、実際に利用するためにはどのような手順が必要なのでしょうか?簡単に解説していきましょう。


AWSアカウントの作成

Amazon GameLiftを利用するためには、まずAWSアカウントを作成する必要があります。AWSの公式ウェブサイトからアカウントを登録し、Amazon GameLiftを利用できるように設定する必要があります。アカウント登録が完了したら、AWSコンソールにログインし、コンソール上部にある「サービス」メニューから「GameLift」を選択します。 その後「GameLift」ダッシュボードで必要な設定を行い、Amazon GameLiftを利用できるように設定します。この手順を実行することで、Amazon GameLiftを利用する準備が整います。

GameLift SDKのダウンロードとインストール

アカウントの登録が終わり、ダッシュボード上で必要な設定がされたらGameLift SDKをダウンロードし、ゲーム開発環境にインストールします。SDKには、Amazon GameLiftとの連携を行うためのAPIやツールが含まれています。例えば、以下の手順でGameLift SDKをダウンロードし、インストールすることができます。GameLift SDKをダウンロードしたら解凍し、解凍したファイルをゲーム開発環境にインストールします。 インストールが終了したら、SDKに含まれるAPIやツールを使用して、ゲームとAmazon GameLiftを連携させます。

ゲームサーバーの設定とデプロイメント

ゲームサーバーの設定を行い、Amazon GameLiftにデプロイします。こうすることでゲームサーバーがAWSのインフラストラクチャ上で稼働し、プレイヤーに提供されることになります。例えば、ゲーム開発会社が新しいオンラインゲームを開発し、そのゲームをAWSのインフラストラクチャ上で稼働させる場合、開発者はまずゲームサーバーの設定を行い、Amazon GameLiftにデプロイすることでプレイヤーがゲームにアクセスできるようになります。プレイヤーがゲームを楽しむためにはこの一連の手順が必要で、開発者はAWSのスケーラブルなインフラストラクチャを活用することで、高い可用性とパフォーマンスを実現することができます。

Amazon GameLiftを活用したゲーム開発事例

実際にAmazon GameLiftを利用したゲーム開発における成功事例はどのようなものがあるのでしょうか?

成功事例(1)

ある大規模なオンラインマルチプレイヤーゲームは、Amazon GameLiftを活用することで急激なプレイヤー数の増加にも対応できるスケーラビリティを実現しました。自動スケーリング機能によりサーバーリソースを迅速に調整でき、プレイヤーに安定したゲーム環境を提供することができました。これにより、開発者はゲームの品質向上に注力することができ大変好評を得ています。

成功事例(2)

あるインディゲーム開発チームの場合は、Amazon GameLiftを利用することによりオンラインマルチプレイヤーゲームをリリースできました。GameLiftのシンプルな料金設定とコスト効率の良さにより、限られた予算の中で高品質なゲームを開発することができたことがリリース成功の要因です。また、マッチメイキング機能を活用することでプレイヤーに適切な対戦相手を提供し、ゲームの評価を向上させることができたとも言われています。


まとめ

スマートフォンの一般化により、ゲームを取り巻くプラットフォーム環境は拡大を続けています。これまではコンシューマー機が開発ターゲットとしてメインでしたが、現在ではスマートフォンやPC、タブレットも含めた「インターネットに接続可能なデバイス」をゲーミングプラットフォームとした開発も視野に入れておく必要があります。世界的にもオンラインマルチプレイのゲームが人気を博しているため、その意味で言えばオンラインマルチプレイゲームの開発に適しているAmazon GameLiftは、ゲーム開発者にとって有益なプラットフォームです。ゲームサーバーの管理や運用にかかる負担を軽減し、開発者はゲームの品質やプレイヤーエクスペリエンスに注力できます。これにより、新たなゲーム開発の可能性が広がることでしょう。Amazon GameLiftの普及により、ゲーム業界全体の変化もさらに加速しています。インフラ管理の負担が減り、コスト効率が向上し、開発者はより創造的なゲームを生み出すことができます。今後もAmazon GameLiftがゲーム業界に大きなインパクトを与え続けることが期待されています。

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