市場での重要度が上がるデータベースサービス。新鋭「Amazon(AWS) Aurora」と実績の「Oracle」、その違いやメリットとは?

AWSとは?

AWS(Amazon Web Services)とは、Amazonが提供しているクラウドコンピューティングサービスです。クラウドサービスとはインターネットを通じて提供されるサービスの総称で、コンピューティングリソースやアプリケーション、データストレージなどの集合体になっています。AWSではこれらのリソースを提供し、ユーザーが独自のアプリケーションやWebサイトを構築・運用するのをサポートしています。

AWS以外にも大規模なクラウドコンピューティングサービスがあり、MicrosoftのAzureやGoogleのGoogle Cloud Platformなども有名ですが、世界市場全体におけるクラウドサービスのシェアとしては、AWSがNo,1のシェアを持っているのが現状です。

AWSが世界シェアのトップでいるのはいくつか理由があり、代表的なものとして話題に上がるのが「世界中に多数のデータセンターを保有していること」、「高い可用性と耐久性、さらにセキュリティ性を兼ね備えていること」の2点です。特にデータセンターの保有数は非常に重要で、世界中にユーザーを抱えている場合は地域ごとに接続品質が異なることはデメリットとして捉えられてしまいます。そうならないために、AWSは「リージョン」に分けてそれぞれのリージョンにデータセンターを設置し、それら世界中に設置されたデータセンターが交互に補完し合う体制を構築しているのです。

費用面での利点が大きいこともAWSが最大シェアを誇る理由の1つで、必要なリソースを必要な時に必要なだけ使用することができ、請求される費用は「使った分だけ」という従量課金制を採用しているためコスト効率が良いという評価がほとんどです。また、これは「必要な時に必要なものを追加できる」というスケーラビリティの良さにも通じているため、この点も高く評価されています。

これらのことが理由で、AWSは企業や個人が様々なビジネスやプロジェクトに利用するための選択肢として最も価値が高いと判断されており、クラウドコンピューティングの代表的なサービスとして認知されているのです。

AWSが提供するサービスの代表例

AWSは数多くのサービスを提供しています。いくつか例をご紹介していきましょう。

AWSが提供するサービスの中でも利用者数が多く、一般的に「クラウドサービス」として想像される方が多いものが、Amazon EC2(Elastic Compute Cloud)などに代表される「仮想サーバーを提供する」サービスです。

さらにAmazon S3(Simple Storage Service)、Amazon EBS(Elastic Block Store)など、データストレージやバックアップを提供するストレージサービスも代表的なサービスとして知られています。

Amazon SageMakerなどに代表される、機械学習や人工知能を提供するサービスもありますし、Amazon Redshift、Amazon Athenaのようなデータ分析やビッグデータを扱うサービスも用意されています。

Amazon InspectorやAWS Shieldのようなセキュリティやコンプライアンスに対応するサービスの他にも、Amazon RDS(Relational Database Service)、Amazon DynamoDB、Auroraなど、リレーショナルデータベースを提供するサービスも展開しているのがAWSの特徴です。

これだけを見ても、AWSがいかに多様な種類のサービスを包括的に提供しているのかがわかると思います。

データベースとは

AWSもRDSやDynamoDB、Auroraなどで提供しているデータベースサービスですが、市場においてデータベースサービスは現在非常に重要視されています。

「データベース」はいうまでもなく「データ管理の基盤」となるべきものです。企業や組織が日々収集・管理する大量のデータを保存・整理し、効率的に活用するための基盤技術がデータベースだと定義されています。そのため、データを適切に管理することで、業務プロセスの最適化や意思決定に役立つ情報を抽出することが可能です。

また、近年ではビッグデータやAI技術が発展し続けているため、ビッグデータとAIを活用したデータ分析や機械学習の活用がますます重要になっています。データベースはこれらの技術を活用するための重要な基盤となるため、業界全体で注目度が上昇しています。

データベースの重要性

現代ではクラウドサービスが急速に発展・普及しています。クラウドサービスが普及していく中で、データベースサービスのクラウド化も高い需要があります。そのため、AWSをはじめとするクラウドプロバイダーは様々なデータベースサービスを提供し始めているのです。データベースがクラウド化されるということは、これまで自社内(オンプレミス環境)で保存するために必要とされていた設備やアプリケーションのコストを削減できることを意味します。そのため、データベースのクラウド化は企業のインフラ運用・管理コスト削減にも寄与しているのです。

単にコスト面での重要性だけではなく、データベースは企業の業務継続性やセキュリティにも大きく関わっています。データベースのバックアップやリカバリ機能によって、災害時やシステム障害時にも迅速に業務を再開できるようになっているので、データベースのセキュリティ対策は企業の情報資産を守るために重要度が増しているのです。

こうした理由から、データベースサービスは現代の市場で高い重要度を持ち、IT業界の各企業から重要視されています。AWSなどのクラウドプロバイダーが提供するデータベースサービスは企業や組織がデータを効率的に管理し、ビジネスに活用する上で不可欠な存在となっているのです。


AWS Auroraとは

現在のIT市場で重要度が高まっているデータベースサービスの1つとしてAWSが提供しているのがAWS Auroraです。AuroraはAmazon RDSの一部として提供されるリレーショナルデータベースサービスで、高いパフォーマンスと拡張性を持ち、MySQLやPostgreSQLとも互換性があります。

従来あった他のデータベースシステムと比べてコストパフォーマンスが高く、自動バックアップやフェイルオーバー機能が組み込まれているため、信頼性と可用性の面が優れています。AuroraはAWSが提供するデータベースサービスの中でも特に高いパフォーマンスと拡張性を持っているため、大規模なデータベースを運用する企業やWebサービスに適したデータベースサービスです。

Oracleについて

AWS Auroraのようなリレーショナルデータベースシステムとして広く知られているのがOracleです。

Oracleは、オラクル社が開発・提供するリレーショナルデータベース管理システム(RDBMS)で、エンタープライズ向けの機能が豊富なことで知られています。高い信頼性とセキュリティ性が特徴で、大量のデータを高速に処理することができるため、世界中の大規模な企業で広く利用されています。他の特徴として、多くのプログラミング言語やプラットフォームに対応していることもあり、柔軟な開発が可能です。クラウド上でのデータベース管理も可能なので、企業の業務プロセスの中心として、重要な役割を果たしています。

Oracleのサービス提供は1979年に開始されており、その後も継続的にアップデートを繰り返して提供されています。それに対してAWS Auroraは2014年にサービス提供が開始され、さらにその1年後である2015年に一般公開が始まりました。AWSのシェア拡大と同時に利用者も増えており、現在では両者の想定利用者層が類似していることから、導入選択肢として比較されることが増えています。

AWS AuroraとOracleの概要と比較

ご紹介したように、AWS AuroraがOracleと比較される理由は両者ともリレーショナルデータベース管理システム(RDBMS)であり、企業向けデータベース市場で競合しているためです。Oracleは1979年のサービス提供開始以来、長年にわたって企業向けデータベース市場で高いシェアを持っており、現在でも多くの大企業や組織がOracleを利用しています。

一方、AWS AuroraはMySQLやPostgreSQLと互換性があることから、既存のデータベースから移行しやすいという特徴があります。高いパフォーマンスと拡張性を持ち、コスト効率も優れているためOracleと比較して競争力があるというのが市場での評価です。AWS Auroraはサービススタート時点からクラウドネイティブで開発されているサービスなので、自動バックアップやフェイルオーバー機能など「クラウド環境での運用に適した機能」が提供されています。

Oracleもクラウド環境でのデータベースサービスを提供しているのですが、サービスが開始された1979年時点のおいてはオンプレミス環境での運用が基本であったため、現代におけるクラウドへの移行や運用の効率性においてはAuroraが競争力を持っているとされています。

AWS AuroraとOracleの類似性と違い

このように、AWS AuroraもOracleも、両者はともにリレーショナルデータベースサービスですが、AWS Auroraはクラウドネイティブな設計でスケーラビリティやコスト効率に優れている特徴があります。一方、Oracleは機能の豊富さやセキュリティに強みがあります。両者の類似性や違いについてもう少し詳しく見ていきましょう。

類似性と違い

類似性に関して紹介すると、両者ともリレーショナルデータベース管理システム(RDBMS)であり、データベースを管理・運用する機能を提供しているという点は共通しています。また、AWS AuroraもOracleのどちらもトランザクション処理やデータの整合性を保証する機能があり、なおかつSQLを使用してデータ操作ができます。

両者の違いについて解説していきましょう。互換性の観点では、AWS Auroraの場合はMySQLおよびPostgreSQLとも互換性がありますが、Oracleは独自のデータベースエンジンを使用しています。動作環境も明確な違いがあり、AWS Auroraの場合はAWSが提供するクラウドネイティブなサービスであるため、AWSのインフラ上のみで動作しますが、Oracleの場合はもともとオンプレミス環境での使用が前提になっているため現在でもオンプレミス環境で使用でき、なおかつOracleのクラウドサービスである「Oracle Cloud」上でも動作するように提供されています。

コスト面でも大きな違いがあります。AWS Auroraは使った分だけが請求される「従量課金制」が採用されていますが、Oracleの場合はライセンス料金やサポート費用が固定費として発生するため、Oracleのほうが全体的なコストとしては高めになる傾向があります。パフォーマンスと拡張性においても両者には違いがあり、AWS Auroraが高いパフォーマンスと柔軟な拡張性をセールスポイントにしていることに対し、Oracleのパフォーマンス性能も高いことは事実ですが拡張性の点においてはクラウドベースでの使用を前提にしたAWS Auroraにやや差をつけられている、と考えられることが多いようです。

クラウドベースのサービス構造か、オンプレミス環境を前提にしたサービス構造かという点が影響している点として、管理機能の違いがあります。AWS Auroraはクラウドサービスとして自動バックアップやフェイルオーバー機能が提供されています。それに対して、Oracleもこれらの機能は提供していますが、どちらかと言えばオンプレミス環境での設定や運用がベースになっているため、クラウドネイティブの考え方とは少し異なる設計です。


AWS Auroraの特徴とメリット

それでは、AWS Auroraの特徴とメリットについて確認してみましょう。

Auroraは従来のMySQLおよびPostgreSQLと比較して高いパフォーマンスを発揮するとされており、Amazonの公式コメントによるとAuroraはMySQLと比較して最大5倍、PostgreSQLと比較して最大3倍のパフォーマンス向上が得られるとされています。Auroraは、需要に応じて簡単にリソースを追加・削除できるため、成長するビジネスに柔軟な対応が可能です。また、読み取りレプリカを最大15個まで作成でき、負荷分散と高可用性を実現できるという柔軟なスケーラビリティが特徴です。

自動バックアップやポイントインタイムリカバリ機能によるデータの安全性が確保されており、なおかつ既存のデータベースアプリケーション(MySQLやPostgre SQL)との互換性が確保されているため移行が容易です。料金体系は従量課金制で、使用したリソース量に応じた金額のみが請求されるので、必要なリソース分のコストだけで使用できます。

AWS上で提供されるので他のAWSサービスとの連携も容易です。こうしたことからインフラ構築や運用が効率的に行えるなどの特徴もあるため、AWS Auroraを使用するメリットとして、高いパフォーマンスとスケーラビリティ、信頼性と可用性の向上、コスト効率の高さ、クラウドネイティブな運用、および互換性による移行の容易さが挙げられます。これらのメリットを理由として、AWS Auroraはスタートアップや中小企業、大規模な企業にも適したデータベースソリューションとして幅広く利用されているのです。特に、クラウドベースのインフラを活用している企業や既存のMySQLまたはPostgreSQL環境からの移行を検討している企業にとって、Auroraは魅力的な選択肢となっています。

AWS Auroraを選ぶ理由

最終的にAWS Auroraを選択するユーザーはどのような点を理由にしているのでしょうか?

理由の1つがコストパフォーマンスです。ご紹介したようにAWS Auroraの料金体系は従量課金制なので、必要なリソースを必要な分だけ使い、その使ったリソース量に対してのみ請求が発生するので、余分なコストを支払う必要がありません。考え方にもよりますが、毎月決まった金額としての固定費を計上するのではなく、月々の必要経費として考えたいユーザーにはメリットが大きいでしょう。

AWS AuroraはAWSが提供する様々なサービスのうちの1つでもあるため、他のAWSサービスと連携させることが簡単です。AWSそのものがクラウドサービスであるため、AWS Auroraもクラウドネイティブな設計になっているのでAWS上で簡単にデプロイ・運用できることも選択の理由として挙げられています。同様に、クラウドネイティブであることからスケーラビリティが高く、リソースの追加や削除がしやすいという柔軟な拡張性があり、なおかつMySQLやPostgre SQLとの互換性があるので既存データベースからの移行も容易です。このようなことがAWS Auroraを選ぶ理由としてユーザーから寄せられています。


Oracleの特徴とメリット

Oracleの特徴とメリットについてもご紹介していきましょう。

すでに解説しているように、Oracleはオラクル社が開発・提供するリレーショナルデータベース管理システム(RDBMS)で、長年の実績と高い信頼性を持っています。大規模なエンタープライズや組織など、より高い信頼性が求められる環境で使用されているケースが多く、このことからも長年にわたる実績に基づいた高い信頼性が評価されていることがわかります。

長年の実績に基づいた信頼性というのは、Oracleが持つ高度な機能やオプションにも現れています。特定の業界やアプリケーションに特化した要件に対応できるように、例えばリアルアプリケーションクラスタ(RAC)やデータガード、パーティショニング、高度なセキュリティ機能などが用意されているのです。大規模なデータベース環境でも高いパフォーマンスを発揮し、データ量やユーザー数が増加しても対応できるスケーラビリティを持っているのと同時に、オンプレミス環境での利用にアドバンテージがあるので企業のセキュリティやコンプライアンス上の要件を満たすことができます。Oracle Cloud上でも提供されているためクラウド環境でも利用できる点にも注目です。

もう1つの特徴として挙げられるのは、サポートや人材の確保が容易だという点でしょう。オンプレミス環境での利用を前提として運用されてきたサービスであり、長年に渡り使われているサービスでもあるため、現在の市場では多くのデベロッパーや管理者がOracleについての知識を持っていることは大きなメリットです。

これらの特徴やメリットから、Oracleは大企業や特定の業界要件を持つ組織に適したデータベースソリューションとして利用されています。また、オンプレミス環境での利用が必要な場合や、独自の高度な機能が求められる場合にもOracleは魅力的な選択肢となります。

Oracleを選ぶ理由

一方で、Oracleを選ぶユーザーはどのような点を理由にしているのでしょうか?

まず挙げられるのは「経験と信頼感」です。ご紹介したようにOracleのサービス開始は1979年と非常に古く、そのため長年の実績があり多くの大企業や組織がOracleを利用していて信頼性や安定性は折り紙付きです。システム環境の入れ替えというのは組織が大きくなればその分だけ投資規模も大きくなり、なおかつシステム入れ替えのスケジュールなども調整が難しくなるため、一度導入されているシステムやアプリケーションを組織的に入れ替えるというのはなかなか簡単にはいきません。Oracleはもともとオンプレミス環境での使用が前提として始まったサービスなので、既存のオンプレミス環境に問題なく適合でき、セキュリティやコンプライアンス上の要件を満たすことが可能です。クラウドサービスであるOracle Cloud上でも利用可能なので、オンプレミスだけではなくクラウド利用も同時に選択肢として持っておきたいという企業のニーズに応えられます。

Oracleは豊富なアプリケーションやツールがサポートされていて、既存システムと統合しやすい設計になっています。こうした背景から高度な機能やオプションも提供されているため、特定の業界や特定のアプリケーションに特化した要件にも対応できることが選択の理由になることがあるのです。

結論としては、AWS AuroraとOracleそれぞれに独自の特徴や利点があります。AWS Auroraはコストパフォーマンスやクラウドネイティブな運用に強みがあり、スタートアップや中小企業などにも適しています。一方、Oracleは経験と信頼性、そして豊富な機能が評価されており、大企業や特定の業界要件を持つ組織に適しています。それぞれのニーズや要件に応じて適切なデータベースサービスを選択することが重要だと言えるでしょう。

まとめ

ここまでAWS AuroraとOracleはそれぞれどのようなもので、どんな特徴やメリットがあるのか?そもそもデータベースサービスはなぜ今重要視されているのか?ということについて解説してきました。AWS AuroraとOracleはサービス設計が成された時期の違いもあり、前提としている使用環境などに違いはありますが類似性も多くどちらにもメリットがあります。世界シェアNo,1のAWSサービスの1つであるAWS Auroraは、他のAWSサービスとの連携やクラウドネイティブのサービスであることから柔軟運用ができるのが大きなメリットですし、Oracleにも長年の運営実績や過去に携わった経験者が多いことから既存システムへの組み込みもしやすいというメリットがあります。業務規模やニーズ、コストやパフォーマンスのトレードオフ、既存のインフラとの連携やチームのスキルセットなどを考慮して、適切なデータベースを選択しましょう。

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