SharePointのフィルター処理とは?便利機能とトラブルシューティングを身につけて業務を効率化しよう。

SharePointとは

SharePointは、Microsoftが提供しているソフトウェア製品で、企業内における情報共有やコラボレーション(=業務連携)を促進することを目的としています。社内でドキュメントの共有、プロジェクト管理、ワークフローの自動化、ウェブサイト構築など、様々な業務プロセスを効率化できるように設計されています。SharePointは、自社内設備にインストールして使用するオンプレミス版とクラウド版(SharePoint Online)の両方があり、企業のニーズに応じて選択できます。

オンプレミス版とクラウド版の違いについて

SharePointとSharePoint OnlineはどちらもMicrosoftが提供する情報共有やコラボレーションを促進するプラットフォームですが、いくつかの違いがあります。主な違いについてご紹介していきましょう。

インフラなどの設備方法

オンプレミス(自社内)版のSharePointは、自社内に設置した物理サーバー(=オンプレミスサーバー)上にインストールして運用するので、自社のITインフラ環境に合わせてカスタマイズや管理が可能です。ただし、サーバーやネットワーク機器の設置や運用、セキュリティ対策などの責任が自社にあります。

それに対してSharePoint Onlineの場合は「クラウドサービス」として提供されるため、インターネット経由でアクセスでき、自社のサーバー設置や運用の負担が軽減されます。また、Microsoftがインフラの運用やセキュリティ対策を行っているため、自社でインフラエンジニアやサーバーエンジニアを必要以上に雇用しておく必要がないため、人的にも物理的にもITリソースの節約につながります。また、複数のユーザーが同時にアクセスすることができ、共同作業や情報共有が容易になります。さらに、モバイルデバイスからもアクセス可能であり、働き方改革やテレワークにも対応できます。ただし、インターネット接続が必須であるため、ネットワーク環境によってはアクセスが遅くなる場合があります。また、カスタマイズや拡張性に限界がある場合もあります。

コスト構造

オンプレミス版とクラウド版はコスト構造も異なっています。オンプレミス版は、サーバー、ハードウェア、ソフトウェア、ライセンス、保守、セキュリティ、電力、冷却、スペースなどの「インフラ関連コスト」がかかります。一方、クラウド版は、これらのコストが不要ですが、その代わりに、「月額か、もしくは年間のサブスクリプション料金」がかかります。また、クラウド版は、スケーラビリティ、可用性、セキュリティ、バックアップ、復元などの追加機能を提供することができます。

オンプレミス版のSharePointの場合はサーバーやネットワーク機器の設置費用や運用費用、そしてアプリケーションのライセンス費用など、初期投資や設備の維持管理費用がかかるコスト構造。

一方のSharePoint Onlineではサブスクリプションベースの料金プランが用意されており、必要な機能やユーザー数に応じて料金を支払うため、オンプレミス版と比較すると初期投資や維持管理費用を抑えられる、というコスト構造になっています。

 


 

アップデート

オンプレミス版のSharePointは新機能のアップデートやインストール作業を自社内で行い、適用する必要があります。アップデートの適用タイミングはアップデート内容を確認してから自由に選ぶことができますが、アップデート作業やテストの人的負担は自社で担うことになります。

クラウドサービスであるSharePoint Onlineの場合は、Microsoft側が定期的に新機能のアップデートを行います。最新のアップデート内容や機能は自動的に適用されるため手間が省けますが、自動的にアップデートが行われるため、適用タイミングや内容の調整に関しては自由度が限られます。ただし、アップデートスケジュールなどは事前にアナウンスされるので、そのタイミングに合わせて様々な調整をしておくことは可能です。

これらの違いを考慮して、自社のニーズやリソースに合わせて適切な選択を行うことが重要です。オンプレミスのSharePointがカスタマイズやセキュリティ面での自由度が高い一方で、SharePoint Onlineは低コストで手軽に始められ、メンテナンスの負担が軽減されるというメリットがあります。

セキュリティとプライバシー

オンプレミス版のSharePointの場合は自社内環境で運用されるため、各企業のセキュリティポリシーに沿ったカスタマイズが可能です。その場合、セキュリティ対策の責任は自社にあります。セキュリティ担当のエンジニアや、運用担当者を設定しておく必要もあります。

SharePoint Onlineの場合はクラウドサービスであるため、アップデートの時と同様に、Microsoftがセキュリティ対策を行います。そのためSharePoint Onlineはクラウドサービスとして非常に高いセキュリティ性が確保されています。ただし、データそのものはクラウド上の仮想サーバーや仮想ストレージに保存されることになるため、データ保護やプライバシーに関するポリシーが各企業の要件や社内ルールと合致するかどうかの検討をしておくことが求められます。

統合と拡張性

オンプレミス版のSharePointの場合は自社内のシステムやアプリケーションとの統合、さらにカスタマイズが容易に行えます。人的な開発リソースや計画に基づいた開発期間など、「時間」が必要になるものの、リソースを自社内で用意し完結させることができます。

SharePoint Onlineの場合は、同じクラウドサービスである「Microsoft 365」との統合・連携が可能で、なおかつ他のクラウドサービスとの連携も可能です。一方で、オンプレミス版ほどのカスタマイズの自由度はありませんが、最近ではPower Platform(Power Apps, Power Automate, Power BIなど)との連携が強化されており、カスタマイズの幅は広がりつつあります。

このように様々な点で細かい相違点があるSharePointとSharePoint Onlineですが、「どちらを選ぶか」という選択は、最終的に企業のITインフラ、コスト、セキュリティ要件、拡張性などの要因によって異なってきます。各企業の状況や要件に応じて、最適なプラットフォームを選択することが最も重要なので、オンプレミスかクラウドか、という文脈ではなく、自社の置かれた状況や目的などをしっかりと分析・検証した上で、オンプレミス版とクラウド版のどちらがより自社に適しているのかを考えることが必要です。

 


 

SharePointの主な機能

それでは、ここからはSharePointの主な機能について見ていきましょう。SharePointは多くの機能を持っています。

ファイルのバージョン管理やアクセス制御を可能にし、なおかつ効率的なドキュメント管理が可能になる「ドキュメント管理機能」。チームメンバーと共同でドキュメントを編集したり、タスクやイベントの管理を可能にする「コラボレーション機能」。業務プロセスの一部を自動化し、手作業を減らすことができる「ワークフローの自動化機能」。社内ポータルサイトやチームサイトの作成が簡単に行える「Webサイトの構築機能」。そして、SharePoint内の情報を効率的に検索できる「検索機能」などが代表的です。

それでは、SharePointが実際にどのような場面で活用されているのか、具体例を見てみましょう。

プロジェクト管理や社内報告

進行しているプロジェクトの進捗管理やタスクの割り当てがどのようになっているかという状況の共有、そしてプロジェクト期限の設定などが可能です。また、プロジェクト進捗に関するものや関連する事柄も含めて、関連事項の報告書や進捗状況や新機能などのプレゼンテーション資料を共有したり編集する作業をスムーズに行えます。

社内研修、人事・経理業務を含む社内コミュニケーション

チームメンバーや部署間の情報共有を円滑に進められるので、社内コミュニケーションを活性化させることが可能です。

例えば社内研修用の研修資料や教材を共有することが簡単になるので、研修内容の管理が容易になります。共有機能が優れているため、人事・経理業務など相互に関連する業務における書類の承認フローや経費精算なども効率化できます。

このような機能を活用することで、企業内のコミュニケーションや業務プロセスが効率化され、生産性の向上につながります。また、SharePointを他のMicrosoft製品(Office 365やTeamsなど)と連携させることもできるので、より効果的な情報共有や業務の効率化を実現できます。

つまり、SharePointの主な機能とは企業内の情報共有とコラボレーションを促進と、業務プロセスの効率化です。このような多機能プラットフォームであるため、その柔軟性と拡張性により、さまざまな業務シーンで活用可能です。もし自分がIT担当者として業務に従事する場合は、機能をよく理解して活用することが重要です。

 


 

SharePointの「フィルター処理」について

SharePointは様々な社内ドキュメントを共有したり、社内業務のコラボレーションを実現できるということはご説明しました。しかし多くの情報を抱えることができる反面、その管理が情報の処理・取り扱いが課題になることもあります。そのために有効に利用できるのが「フィルター処理」です。

フィルター処理とは、特定の条件に基づいてデータを絞り込むことです。SharePointでは、フィルター処理を用いることで、大量の情報から関連性の高いデータだけを抽出し、分析や共有を効率化できます。フィルター処理の条件は、データの属性やキーワード、日付範囲など多岐にわたります。

SharePointでは、主に以下の3つの方法でフィルター処理を行うことができます。

ビューを利用したフィルター処理

SharePointのリストやライブラリには、ビューという機能があります。ビューを利用することで、条件に合致するデータのみを表示させることができます。ビューを作成する際に、フィルター条件を設定し、必要なデータだけを絞り込むことができます。

検索機能を利用したフィルター処理

SharePointの検索機能を利用すると、ビューを利用することで、条件に合致するデータのみを表示させることができます。また、検索結果ページでリファイナーを設定することで、検索結果をさらに絞り込むことが可能です。

クエリを利用したフィルター処理

SharePointの開発者向け機能である「クエリ」を使用してフィルター処理を行うこともできます。SharePointのREST APIやSearch APIを利用することで、プログラム上で条件に合致するデータを取得できます。

フィルター処理の実践例

SharePointでフィルター処理を活用した実践例としては次のようなものもあります。

【1】営業部門が過去の商談履歴を検索する際、特定の期間や顧客に関連するデータだけを表示させる。

【2】社内報告資料のリストから、自分が関与するプロジェクトの資料だけを抽出する。

【3】社内イベントの参加者リストで、特定の部署のメンバーだけを表示させる。

このように、フィルター処理を行うことで目的とする情報を素早く効率的に表示させることができます。

 


 

フィルター処理を活用するメリット

フィルター処理を活用することで得られるメリットとしては、「情報の検索効率向上」があげられます。条件に合致するデータだけを表示させることで、目的の情報を迅速に探し出すことができます。分析対象となるデータを絞り込むことで、より関連性の高い結果を得られるなど、データ分析の精度向上と効率化もメリットです。

ユーザーの役割や関心に応じた関連データだけを表示させることができるので、業務に集中しやすくなりますし、フィルター処理を利用することで特定の属性に基づいてデータをグループ化し、データを可視化して視覚的に把握しやすくなります。

このように、フィルター処理を活用することでSharePoint内の情報を効果的に整理・抽出し、業務の効率化を図ることができます。

フィルター処理のトラブルシューティング

フィルター処理は業務効率化のために非常に重要な機能ですが「問題が発生しない」「課題が無い」というわけではありません。フィルター処理に関するよくある問題と対処法について解説します。

問題(1)フィルター条件が適用されない

【対処法:】 フィルター条件が正しく設定されているか確認する必要があります。特に、条件の演算子やフィールド名、データ型が正しいかどうかをチェックすることで解決できることがあります。

問題(2)フィルター処理が遅い

【対処法:】リストやライブラリ内のデータ量が多い場合、フィルター処理が遅くなることがあります。不要なデータを削除したり、アーカイブすることでデータ量を減らすことが効果的です。また、インデックスを設定して検索性能を向上させることも検討すると良いでしょう。

問題(3) 複数条件のフィルターが正しく動作しない

【対処法:】複数条件のフィルターを適用する際、条件の組み合わせによっては予期しない結果が表示される場合は、フィルター条件の優先順位やAND・ORの使い方を見直し、必要に応じて条件を修正してください。

問題(4)フィルター処理で表示されるデータが正しくない

【対処法:】フィルター処理で表示されるデータが正しくない場合、フィルター条件が適切に設定されているか確認してください。また、データの更新が正しく行われているかどうかもチェックしてください。

 


 

フィルター処理のパフォーマンス向上

注意点もいくつかあるフィルター処理の使い方ですが、フィルター処理を使ってSharePointを利用する場合のパフォーマンスを向上させるためには、いくつか有効な方法があります。

リストやライブラリのフィールドにインデックスを設定することで、検索性能が向上します。また、不要なデータを削除・アーカイブすることで、データ量を減らし、処理速度を向上させることができます。

条件の最適化して効率的なフィルター条件を設定することで、フィルター処理はよりスムーズになりますし、条件をシンプルにし、不要な条件を削除すれば全体的なパフォーマンスは改善されます。また、データ量が多い場合はビューを利用してデータを事前に絞り込むことで、フィルター処理の負荷を軽減することも可能です。

SharePointのフィルター処理は、情報の抽出や分析に非常に役立ちますが、例にあげたような問題が発生することもあります。トラブルシューティングの方法を理解し、問題が発生した際に適切な対処ができるようになることが重要です。また、フィルター処理のパフォーマンス向上のために、インデックス設定やデータ量の最適化などの方法を活用しましょう。これにより、SharePointでの情報管理がより効率的になり、業務の生産性が向上します。

まとめ

SharePointは、情報共有やコラボレーションを促進し、業務効率を向上させるための強力なプラットフォームです。フィルター処理は、SharePoint内の大量の情報から関連性の高いデータを効率的に抽出し、分析や共有を容易にする重要な機能です。適切なフィルター処理を活用することで、業務の効率化と生産性向上が期待できます。そのためにはSharePointの基本機能や利用シーンを理解し、効果的な情報共有や業務効率化を実現できるようになることが必要です。トラブルシューティングの方法を理解し、フィルター処理に関する問題が発生した際に迅速かつ適切に対処できるようになっておくと、社内における情報管理の効率化を図ることができます。これらのポイントを押さえながら、今後の学習を進めていくことで、SharePointのフィルター処理を効果的に活用し、業務の効率化に貢献していきましょう。

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